「送電塔のミメイ」

PCゲー

 いろいろ不安定な世情となってまいりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今回は当ブログにて最初に感想を書かせていただいたのと、同じ作者様のサウンドノベル「送電塔のミメイ」について紹介記事書いていこうと思います。
長々とお待たせしたかと思いますが、さっそくどんなゲームなのか概要から紹介していきます。

送電塔のミメイ

概要

作品の名称

送電塔のミメイ

制作者

里見しば

公式サイトURL

送電塔のミメイ・紹介ページ

ジャンル

伝奇サウンドノベル

公開日

2007/2/17

作品のあらすじ

廃墟離島と呼ばれる小さな島がある。
誰にも帰りを待つことなく、寂しく浮かぶその島には、化け物が出る。
化け物は島のあちこちにわき、人の念を喰っては形を成す。
名を、コゴリ鬼という。
役目を負って島を訪れ、コゴリ退治に挑む娘・ミメイ
彼女の歩みと、送電塔が建つ島に暮らす人々の姿を描いた物語。

送電塔のミメイ・あらすじ・登場人物
より

前作と変わらず無料で公開されているゲーム(著作権フリーではなく)なので、今でもダウンロードして遊ぶことが出来ます。注意点としてはクロームを使っている人は強制的にhttpsの方に飛ばされてしまい、別のページが表示されてしまうと思いますが、アドレスの”https”の”s”を消して再度更新していただければと思います。

前作から

 今作、主人公のミメイやあらすじを見てわかる通り、和風伝奇モノな空気感です。
”コゴリ鬼”ひいては山姥など妖のものはいますし、不思議な力もあります。日本とは明言されていませんが、まあそうでしょうといった具合。明治・大正あたりだろうけど、背景が特殊なので断定しきれないぐらいのふわふわな世界観と想像してもらえればよいかと思います。異国情緒あふれていた前作とは趣が大分異なります。

主人公のミメイ

ホラー色が強いわけではないですが、伝奇というジャンル由来の不気味さは十分にあると思います。
かといっておぞましい描写があるかといわれるとそうでもなく、前作と似たような人同士のほんのり切なくも温かいやり取りが主だった内容です。
”コゴリ鬼”と呼ばれる形のない化け物が形を得るために、人の心の弱さを映し出して人を喰うと、文面にするとハードな部分もありますが、グロい類の描写はありません。
とはいえ序盤の鵺のサル顔は慣れない人はちょっぴり怖いかも?
それ以上の視覚的な波はないと思います。

人が抱えるいろいろな弱さを描く

 これまでの大雑把な紹介で近年の大きな潮流に乗ってきた人たちは、妖怪退治系1の作品かと思う方もいらっしゃるかと思います。今作でもそういった描写はなくはないですが、そういった部分は必要な部分だけ描き、昔ながらの子供に聞かせるような言い伝え2やら伝承を基にして人の心の機微をより繊細に描いているのが印象的に感じました。

今作の象徴”送電塔”

自分も子供のころに感じた「眠れない時に誰かが見ているんじゃないかという不安」だったり、「人を失った悲しみ」、「わかっていてもどうにもできなかった後悔」、それぞれの人が抱えている心の隙間や後悔を”どう抱えて生きているのか”という部分を書いているのが新鮮でたまらないですね・・・。
昨今どうしても現実からかけ離れた世界観の作品が多くみられ3ますが、一度、ここまで心の内をあけすけにした作品が世に改めて出された方が、多くの人が救われるんじゃないかなというのは言い過ぎかもしれませんが思いました。
離島という閉鎖された空間なので登場人物も絞られて、各人の描写も十分印象に残るぐらいにはあったんじゃないかなとは思います。というよりも、これだけ短いのに立ち絵のあるキャラの印象が全て残るくらいにしっかりと描かれていたなぁという感じですね・・・。

主要なキャラについて

W主人公。右側が夜刀(やと)

 今作は基本的に上記二人、ミメイか夜刀のどちらかの視点で進行します。
ミメイは島の外からコゴリ鬼を退治しに来た退魔士?4ですが、特に専門の知識を持っているわけではなく、ほぼほぼ普通の女の子です。武器は紅い和傘だが、しっかりとコゴリには効く様子。島の人たちにも早々になじみ、人馴染みが良く見える一方で、元来はあまり表に表情を出さない?らしい。
ちなみに島に来る前は髪が長かったそうな。

夜刀はコゴリ鬼を食べるための退治を目的とし、自身もコゴリ鬼であると自称するパッと聞いてヤバイ人なのですが、本編ではそのヤバさがみじんも感じられません。最近のエンタメに浸っている人からすれば、ちょっと無愛想な良い人です。登場時点では実質的にこの島唯一のコゴリ鬼に対する戦力です。ついでに一番コゴリ鬼について詳しい人でもあります。武器は見ての通り刀。父親譲りの剣術でコゴリ鬼に相対します。

以上が大まかな説明ですね。最近はこういった素朴な感じの女の子がいないんで、ちょっと寂しいんですよね・・・。雪国出身の白い肌のあきたこまちっぽい子いいですね・・・。
trueを遊んだ方はわかると思いますが作者の好みなのか、似たような性格のキャラが多いです。ミメイは前作でいう”ラ”のポジション。生真面目で俗世に慣れていない感じに覚えがありますね。
そういう意味で言うと夜刀は黒目ですね。しかしながらこちらは割と年若く感情をより表に出す方ですが。立ち絵の中で和装の眼帯姿に柳生っぽさを感じました。

柳生十兵衛っぽくない・・・ない・・・?

序盤の牽制はどこへやらなんだかんだ仲がいい姿がほほえましい二人です。

ちなみに両者ともちゃんと着物姿があります(ミメイの方は晴れ着みたいなものですが・・・)。

鳥居杏子(上)と矢代総一郎(下)

 次は島のコゴリ退治の専門家、矢代家の長男と鳥居家の長女である矢代総一郎と鳥居杏子について。
島にあるコゴリ鬼を退治するために古くから続く家の”三家”ある内の二家の末ですね。そのあたりのことについては本編を読んで確かめてもらえればと思います。

総一郎は一度島を離れたものは戻ってこないといわれる中、コゴリが気になって戻ってきたそこそこの根性がある子です(要約)。というのも今の説明だと一度逃げた、ただのヘタレとも受け取られかねないですが、性格としてはむしろ強かですね。ボケているようで食えない感じが良いです(小並感)。コゴリに対する術も子供のころに既に身に着けていましたが、コゴリではないものに使ってしまったので、自分には力がないと勘違いして一度島を出てしまいました。それでも残してしまったもう一つの家系で幼馴染の杏子が気になって戻ってきたという感じですね。

杏子は生まれて此の方島一筋の子です。そこそこ気の強い性格で、ツンとデレの比率が5:5ぐらいのバランスが良いツンデレ5具合です。こちらもコゴリ退治の術は持っており祓うことも可能ですが、開始時点ではコゴリに相対したことはありません。古い家だけあってそこそこお嬢様ですが、同年代が少ない環境もあってかいろいろな意味で不器用です(性格的にも器用さ的にも・・・)。
ミメイは同年代の珍しい友達ということで、終始友達のいなかった不器用なツンデレを見せる姿がとてもかわいらしい。

さすがは幼馴染、というべきなのか相性はいいですね(性格的に)。杏子の不器用な部分を、なんだかんだうまい具合に総一郎がこなしてくれます。どちらの家も昔からの家ですが、鳥居家がどちらかといえば保守派、矢代家は当主が新しい物好き(機械など島にない珍しいもの)なので全体的に対称性に重きをおいた関係性です。

あとがき

前のブログでも書いていなかったので、こういった紹介形式の形となりました。あのプレイしながらの感想集はやっぱり動画の方が見やすいよね・・・。
というわけでやっぱり流石というとヨイショ感がすごいですが、作者さんの色がすごく自分自身好きで、それが濃く反映されていたので今作も面白かったというのは今も昔も変わらなかったです。
シナリオのまとまりや心情がすっと心に入ってくる感じは昨今の作品を差し置いても抜けているなと個人的には思っています。
他の作品に比べて短いですが、それでもじっくり読めば5時間以上は楽しめるので、プレイしたことがない人は是非!

  1. ジャンプ漫画(ぬ~べ~や呪術廻戦等)をはじめとして、TYPE-MOON系、死印など薄いかもしれませんが近年にはなんだかんだでたくさんの伝奇系の作品があふれてますよね。 ↩︎
  2. 例えばあらゆる隙間は別の世界に通ずる的なことだったり。 ↩︎
  3. もちろん全部が全部ではないですし、把握していない作品の方が多いのですが・・・。 ↩︎
  4. 本文中でも目的や意図も序盤では薄いがはてさて・・・。 ↩︎
  5. もう死語なのかな・・・。今日日聞かないよね・・・。 ↩︎
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